社内制作の成功ポイント/デザイン発注、撮影立ち合い、進行管理

ある企業の制作室を立ち上げたことがあります。そのとき学んだ、社内制作で大切なことをご紹介します。社内での制作に奮闘している方々の参考になればうれしいです。

Contents

たった一人の制作室という経験から

子育て時期に長時間労働が当たり前の広告プロダクションから離れて、一般企業で働いたことがあります。制作室にコピーライターとして転職したはずが、実は初の制作担当者だったのです。期待されていることは、通販カタログの制作体制をイチからつくりあげ、制作室を軌道にのせることでした。

デザインや撮影、印刷工程にどっぷり関わることになりました。売れる通販ページをつくるには、どんなデザインにすればいいのか、失敗しないための撮影準備など、多くのことを実践で学べ、本当にいい経験をさせてもらったと思います。

当初、折り込みチラシ程度の制作が、5年後には100ページ以上の通販カタログを年4回以上、販促ツールを毎月出せるほどになっていました。

 

デザイン発注/慣れないときの乗り切り方

最初に本格的に制作したものは10ページほどの通販カタログでした。

まずカタログ全体をどうまとめるか考えました。構成や広告文は自分で担当するので準備不要ですが、デザインは依頼するのでわかりやすく説明できるようにイメージをしっかり固めました。

通常、アイデア出し段階ではサムネール(小さなデザイン設計図のようなもの)でデザイナーと打合せをします。

初めてのデザイナーに発注するので、印刷物のイメージをできるだけ具体化しようと考え、雑誌やカタログなどを切り貼りして、原寸大の見本を作りました。社内の関係部署に説明しやすく、デザイナーや撮影会社との打合せや制作もスムーズに進みました。

 

思いどおりのデザインが上がってこない原因と対策

通販カタログのボリュームが増え、何人かのデザイナーに発注するようになりました。初めて依頼する場合、意図とは違うデザインが上がってきたり、デザイン修正が的外れだったりして、反省することもありました。

思いどおりのデザインが上がってこない原因は3つ考えられます。

  1. 打ち合わせで理解してもらえていない
  2. デザイナーのセンスに期待しすぎ
  3. 修正指示がアバウト

ひとつずつ対策を考えてみましょう。

 

「打ち合わせで理解してもらえていない」対策

初めて発注するデザイナーさんに多いのですが、説明した後で「質問はありますか?」とたずねても、「大丈夫です」と言われることがあります。初めての仕事ですぐに全部理解してもらえることは基本的にありません。この場合、質問できるほど理解してもらえていない、ということが考えられます。

ちゃんと理解してもらうために、わかりやすい資料を渡すようにします。専門用語の説明をしたり、商品資料をつけたり、初めての方にも理解できるように工夫します。ただし、説明文が長い、資料が多すぎるというのは見落としのもと。重要ポイントがすぐに伝わる簡潔さも大事です。

制作量が多いとき、デザイン案は重要部分を先行チェックさせてもらうようにしました。これをすると、全部大幅修正という悲劇が避けられます。

一発で合格ラインのデザインが上がってくることは難しいもの。初回は修正が多いと思い、チェックのスケジュールを少し長めにとりました。

 

「デザイナーのセンスに期待しすぎ」対策

「この商品をPRしたいので、センスよくデザインしてください」とだけ伝えるのは無謀です。コミュニケーションのとれるデザイナーなら、上手にヒアリングして、こちらの考えを引き出してもらえますが、そういうことを苦手とするデザイナーも多いんです。

どうすれば売れるのか、お客様に響くのか、そこを知っているのは発注する側なので、「こんなデザインを考えている」とはっきり伝える必要があります。ちゃんと理解してもらえると、期待以上のデザインを提出してもらえます。

 

「修正指示がアバウト」対策

デザインに修正指示を出すときも要注意です。「この写真は小さめに」「このキャッチコピーを目立たせて」などの言葉だけでは伝わらないことが多いんです。どこまで小さくするのか、どのように目立たせるのか、具体的に描くようにしました。

なぜ修正してほしいのかという意図も伝えると、こちらの考えを理解してもらえ、修正指示より良い案を教えてもらえることもあります。

 

何年もデザイナーと組んで仕事をしてきたのに、制作担当の最初の頃はうまくデザイン発注できないこともありました。相手の立場になって考え、伝わるように工夫すると、思いどおりのデザインが上がってくるようになりました。デザイナーの力をうまく引き出すのは、制作担当の力量にかかっていると思います。

 

撮影立ち合い/効率よく撮影するポイント

印刷物(カタログやチラシなど)などの制作で大切な要素は写真。いい写真があれば、カタログ表紙やチラシの出来が数段アップします。

通販カタログでは、写真によって売り上げが何倍も変わることがあり、撮影にはかなり力を入れていました。そうはいっても、予算以内におさめるのは鉄則。プロに依頼して撮影する場合、効率よく全カット撮り切ることも重要です。

 

撮影成功のポイントは下準備です。数カットの撮影でも準備は怠りませんでした。

撮影準備 ①撮影カットの内容をリスト化

撮影をする際、最初に考えることは、何を撮りたいのか、はっきりさせておくことです。人や動物、モノ、建物(屋内・外観)など、撮影対象によって機材が変わります。また希望カット数が多すぎる場合があります。事前にわかると、削除したり優先順位をつけたりできます。

撮影カット内容をまとめたリストを作成すると、撮影カット数がわかり、撮影日や撮影費用などを相談しやすくなります。

 

撮影準備 ②イメージを伝える写真資料

続いて準備することは、どんなイメージの写真を撮りたいのか決めておくことです。イメージを言葉で説明して伝えるのは難しいので、見本となる写真資料を用意します。

レイアウトや雰囲気(ソフトか、シャープかなど)など、希望のイメージに合う写真を見本として探します。画像素材のサイトをよくチェックしていました。いい画像が見つかれば、購入を検討することもできます。

 

撮影準備 ③ラフ案を作る

印刷物のラフ案(文字・写真・図表など要素を入れてざっとレイアウトしたもの)を用意します。

例えばこんな感じのものです。

ラフ案で、写真が横位置・縦位置・正方かがわかります。変更の可能性がある場合は伝えておけば大丈夫です。
(デザイナーに依頼している場合は提出してもらえます)

 

以上を準備して打ち合わせをすると、撮影がスムーズに進み、効率よくいいカットを撮ることができるでしょう。事前に打ち合わせをしない場合は、撮影の前に資料をメールして希望を伝えておきます。

 

進行管理/知っておきたい印刷物制作の流れ

スケジュール

社内制作で押さえるべきポイントは、スケジュールと予算。この2つをしっかりつかんでおかないと、制作自体が迷走します。

スケジュールをつかむには、制作の流れを理解しておくことが肝心。慣れないと複雑に感じますが、案外シンプルで、3つの大きな流れになります。

<印刷物制作の大きな流れ>
第1段階/制作打ち合わせ(完成イメージ共有)
第2段階/本格的制作(デザイン案~入稿)
最終段階/印刷工程

 

第1段階/制作打ち合わせ (完成イメージ共有)

資料を準備して打ち合わせを行います。

<資料例>
形態:チラシ、パンフレット、カタログ、ページ数
目的:商品(サービス)の売上アップ、イベント集客など
ターゲット
商品(サービス)に関する資料
配付シーン:商品同梱、DM、店舗配付など
配付時期(納品日)・部数・予算

完成像が見えている場合は、イメージ資料として雑誌のページやWEBサイトの画像などがあると伝わりやすくなります。

 

第2段階/本格的制作(デザイン案~入稿)

デザイン案(ラフ)で検討

「こんな感じで進めようと考えています」というデザイン案(*ラフ)が提出されます。これをもとに打ち合わせを行い、制作側とのズレをなくします。

*ラフはざっくりしたデザイン案。キャッチコピーや小見出しが入り、写真・図表などの位置が囲みで指示され、デザインの雰囲気やレイアウトがわかります。

この段階で考えをきちんと伝えることが大事です。なんとなく違和感があれば率直に伝えます。イメージの修正は後の段階になるほど難しくなってきます。

 

カンプのチェック&修正

デザイン案(ラフ)をもとに*カンプを受け取ります。
*カンプとは全要素を入れてデザインしたものでカラー出力されています。

カンプでチェック(校正)して修正(1回目)*初校と呼ぶこともあります。
修正カンプをチェックして再修正へ(2回目)*再校と呼ぶこともあります。
最終校正を行い、OKとなれば入稿します。

※ネット印刷利用で、入稿後の校正なしの場合はすぐに印刷加工となります。

 

印刷工程

印刷会社によって若干異なりますが、基本の工程は下記のとおりです。

初校(1回目校正) → 再校(2回目校正) → 最終確認 → 印刷 → 納品

※色校正(色のチェック)もします。

 

制作の流れ まとめ

① 制作打ち合わせ

② ラフ案で検討
③ カンプ(初校)チェック
④ カンプ(再校)チェック
⑤ 最終校正、入稿
※ネット印刷ではここから印刷開始の場合もあります。

⑥ 印刷工程(初校)※色校正
⑦ 印刷工程(再校)
⑧ 最終確認後、印刷開始
⑨ 納品

 

制作期間を知りたい場合は、上の制作の流れに日にちを入れてみます。考える時間やチェックする時間などを考慮すると、制作にはある程度の日数が必要なことがわかります。

 

 

★社内制作のクリエイティブ強化、制作体制の立ち上げサポートも行っています。

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